犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

JKの 初体験や これ如何に

近所の女子高生(JKだJK)、サヨコちゃんの話は、この日記でも何度かしている。

最初は、6年程前のこと。タイスケもまだ6歳。やんちゃ盛りの頃である。人の気配を感じると、勝手口から、表通りに面した門扉にまで出てきて、後ろ足立ちになって外を覗く。当時、小学生だったサヨコちゃんは、下校の途中、我が家の前を通る度、この人懐こいワンコが面白くて、門扉越しに相手をしていた。
これが、サヨコちゃんとお袋が知り合うきっかけになった。夕方、夕刊を取り込もうと、勝手口から門扉に向かうと、小学生の女の子がタイスケと遊んでいる。「あらー、あなた、ワンちゃん好きなの?」「ウン、ウチもラブラドール飼うてんねん。黒ラブで、ロデムって云うねん」「あらそう。この子ね、タイスケって云うんよ」「ふーん、タイちゃんかー」「あなた、家、近所なの?」「ウン、七番町」「あらー、そうなのー」 以来、サヨコちゃんは、下校の度に我が家の前を通ってタイスケと遊び、お袋は、那由他が生まれる前だったから、孫を相手するような感覚で、お菓子を用意したりして、彼女と言葉を交わすようになっていった。

当時からバイオリンのお稽古をしていたサヨコちゃんは、お稽古の帰りに、バイオリンを背負って、我が家へやって来ることもあった。お袋に「いっぺん弾いて聴かしてみてよ」と云われ、「ええー、譜面台がないと弾かれへん」と答えたサヨコちゃんは、お袋に頼まれたオレが譜面台を持参すると、唖然としていた。一般の家庭に譜面台なんて絶対ある訳ない、断りのいい口実のつもりが、その家に住む髭ヅラのオッサンが、まさかジャズギターをやっているなんて、夢にも思っていなかったに違いない。

3年前の12月の初旬の土曜、いつものように我が家にやってきたサヨコちゃんは、たまたまお袋が不在で、応対に出た親父と簡単に挨拶をして帰っていった。その翌週、やはり土曜にやって来た彼女は、親父が死んだことを聞いてショックを受けた。先週、普通に言葉を交わした人が、その数日後に死んでしまったのだ。彼女は家に帰り、お母さんに話をしたのだろう、その日の夜、お母さんとサヨコちゃんが、花をお供えにきて下さった。お袋とお母さんが話をしている傍らで、サヨコちゃんはふさぎ込んで、涙を流していた。

那由他が生まれてからは、自営業で、土曜も店を開けねばならぬ妹夫婦に代わって、お袋と義母が、一週おきに那由他の面倒を見るようになる。金曜の夜からお泊りで、土曜一日、我が家か、千里の義母の家に、那由他を預かるのである。これで、サヨコちゃんにしてみたら、我が家へやって来る楽しみが、ひとつ増えた。歳の離れた弟が出来たようなものなのだ。「ナーユ、こっちおいで、遊んだげよ。なぁ、この人誰?」「サヨチャン」「そうやー、覚えてくれた? ナユは賢いなー」 去年の夏休みには、那由他が来る金曜に合わせて、サヨコちゃんも我が家に泊まったりもした。

小学生だったサヨコちゃんも、去年の春から、高校生になった。バイオリンもまだ続けているようだが、何より驚いたのは、高校ではアコースティックギター部に入り、尚且つ、フェルナンデスのストラトタイプのギターを買って、同級生とアニソンのコピーバンドを始めたと云うのだ。これも「けいおん!」効果と云うやつか。畏るべし、放課後ティータイム
と云う訳で、去年のクリスマスには、「那由他が来るからおいで」とエサを撒いておいて、KORGのチューナー、フェンダーのギターストラップ、エリクサーのラウンド弦をプレゼントした。永い間、お袋やタイスケや那由他の相手をしてくれたお礼も込めて、と云うことなのだった。

去年の暮れ、サヨコちゃんからお袋に、メールが入った。「おっちゃんがよく行ってる、ジャムセッションって、どんなん? ちょっと行って、観てみたい」 オレは、千里・ビーフラットで月いち行われているジャムセッションに、3年程前から通っていて、お袋を何度か連れて行ったこともある。お袋から、そんな話を聞いていたサヨコちゃんは、自分がギターを始めたこともあって、生演奏と云うものに興味が湧いてきたのだろう。これは面白い。アニソンのコピーをしているイタイケな女子高生に、いなたいオヤジ共が、酒を飲み、煙草を燻らせながら、譜面一発で、どスタンダードだの、ブルースだの、ファンクだの演奏している光景を見せる。こんなイケナオモロイ遊びが他にあろうか。
いやー、全然そんなこたなくて、女子高生見た途端、みーんな、好々爺になっちまうだろーなぁ。何にしたって面白い。

と云う訳で、今週土曜、お袋と、サヨコちゃんと、サヨコちゃんの友人を伴って、ビーフラットセッションに出掛けるのである。結果は如何に。刮目して待て。