犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

撫子を 白雪姫が 抜き去りて

惜しかったスねぇ。最後2キロまでトップだったんだけどね。
金を獲ったのは、中国の白雪。シラユキぢゃなくてハクセツ。中国語読みでいけば、パイシュエかな。キレイな名前ですなぁ。白雪姫ですな。

お、やり投げの村上、銅メダル獲得。最終日に、日本勢、頑張ってますなぁ。

女子マラソン 尾崎が銀メダル
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=938252&media_id=2

=*=*=*=*=*=
昨日の日記に書いた、作家、安曇潤平氏が語った、山の怪談。夏の終わりのサービスです。

安曇氏が、「ゾンデ使いの名人」と呼ばれた山男に聞いた話、である。

ゾンデとは、雪崩等で遭難した登山者の捜索に使われる、3m程の長さの棒である。深く積もった雪面に、このゾンデを突き立て、その感触で、雪の中に埋もれたものを探す道具である。

あるとき、数人の登山者チームが遭難、件の山男氏は、何名かと捜索に向かった。遭難したと思われるポイントで、ゾンデを使う。幸い、1名を残して、登山者たちは生存した状態で発見された。
しかし、あと1名がどうしても見つからない。山男氏は、ふと気になり、少し離れたポイントに、ゾンデを突き立て始めた。そこは地形的に、雪崩で雪が埋もれたとは考えられないポイントだったが、山男氏は、虫が知らせたとでも云うのか、ゾンデを使って、そのポイントの雪の中を捜索した。
やがて、ある感触があった。掘り出してみると、遭難した登山者チームの、最後の1名が発見された。その方は既に息はなく、亡くなっていた。山男氏は、何とも云えぬ残念な思いにかられた。生きて発見出来なかったこともあるが、その方の額に傷を付けてしまったからだった。ゾンデで探す内、雪の中に埋もれていた遺体の額に突き立ててしまったらしい。

それから数年。夏山登山のシーズン。山男氏は、登山にやってくる観光客を、山小屋に案内する仕事もしている。その日は天候も良く、無事、登山グループを、中腹の山小屋に案内した。案内を終えるのは、下山するには遅い時間になるだろうと見当をつけていたので、山男氏は、テントの準備もしていた。山小屋の主人は知り合いでもあるから、泊まっていけばいいと云ったが、小屋のすぐ側に野営が出来る場所もあったので、そこにテントを張ってひと晩過ごすつもりだった。

山小屋の主人と酒を飲み、夜も更けたので、野営場所に張ったテントに入って眠った。深夜、ふと、足音のようなもので目が覚めた。ザク。ザク。夏山シーズンなのに、雪を踏みしめるような音だ。それに、野営場所は平坦なはずなのに、その音は、勾配のある、その上の方から聞こえてくるように感じられる。
何だろう。おかしい。足音は、少しづつ近づいてもいるようだ。ザク。ザク。だんだん大きくなってくる。やがて音は、テントの中で仰向けになっている山男氏の、頭の近くまできて止まった。
途端に、金縛りにあったように、体が動かなくなった。あ、まずい。おかしい。体、動かさなきゃ。しかし、ぴくりとも動かない。視覚と聴覚ははっきりしているが、体は全く動かない。仰向けのまま、山男氏はテントの天幕を見つめていた。
と、次の瞬間、天幕を突き破って、山男氏のへそのあたりに、何かが突き立てられた。ゾンデだった。ゾンデは、へそを突き刺す寸前でとまり、スッと上がっていく。ああー、まずい。体、動かさないと。動け。動け。また、天幕を突き破って、ゾンデが、今度は胸元の寸前で止まった。スッと上がる。動け。動け。またゾンデが、今度は喉元の寸前に突き立てられた。次は額だ。間違いない。山男氏は必死だった。動け。動け。天幕を破り、ゾンデが、山男氏の額に。彼はそこで気を失った。
気がつけば、夜があけていた。あ、生きてる。よかった。天幕を見る。突き立てられた跡などなかった。夢だったのだろうか。

山男氏は、安曇氏に、実は、ゾンデが突き破った破れ目から、突いている奴の顔がチラリと見えたんだ、よく知っている顔だったんだ、と語った。安曇氏は聞いた。それはもしかして、あの雪山の捜索で、最後に遺体で発見された、あなたが額に傷をつけてしまった、その人だったんですか? 山男氏は答えた。イヤ、それ、オレの顔だったんだよ。