犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

中坊のヒーローが やってクルーゾー

中学1年の春、友人と連れ立って、梅田の東映会館に「ジョーズ2」と云う映画を観に行ったことがある。スピルバーグ監督作の一作目ではなくて、ヤノット・シュワルツと云う職人監督の作品。この人は、まさに職人監督と呼ぶに相応しく、B級映画ばっかり撮っている。クリストファー・リーヴ主演の「スーパーマン」(リチャード・レスター監督)がヒットしたあと、ヘレン・スレイター主演の「スーパーガール」を撮ったり。ハリウッドビジネスの中にあって、使い勝手のいい監督だったのだろう。

東映会館は、御堂筋と1国、2国の交差点を少し南に降りたところに在って、今では取り壊されてコイン駐車場になっている。
阪急梅田駅を降りて、友人に連れられるまま行ったので、はっきりと場所を覚えた訳ではなかったのに、翌年の正月映画(何だったかは失念した)を、別の友人と一緒に観に行く事になり、うろ覚えのまま探し回って、結局見つけることが出来ず、途方に暮れていたら、ふと目に入った映画の看板があって、それを観ようと云うことになった。場所は三番街シネマ、作品は「ピンクパンサー4」
阪急梅田駅から東映会館を目指して、結局三番街シネマで手を打ったと云うことだが、位置関係を完全に把握している現在からしてみると、なんとも情けない話だ。三番街のあの辺りをうろうろしていただけ、と云うことですからね。

しかし、代替作品として観る事になった「ピンクパンサー4」だが、これが面白かった。大スクリーンでスラップスティックコメディを観たのは初めてで、ハラハラドキドキの展開と、分かりやすくてベタだが力押しに押してくるギャグと、オーラスの香港市街での追っかけ及び花火倉庫でのドンパチ(その結末は推して知るべし)に、中坊のオレはすっかり満足してしまった。
ちなみに、今、改めてこの作品を観ると、正直云って、それほどスゴい作品でなかったことに愕然とする。その後、様々なコメディに触れる内、ギャグを受け止める体力がついた、と云うことだろうか。とは云いながら、13歳の少年が受けたカルチャーショックはただならぬもので、クルーゾー警部ことピーター・セラーズは、オレにとっては、バスター・キートンマルクス・ブラザース、ジョン・ベルーシと云った人々と並ぶ、カルチャーヒーローなのである。

今日、帰宅すると、Amazonで注文していた「おくりびと」と「博士の異常な愛情」のDVDが届いていた。去年のキネ旬ベストワン作品で、アメリカ・アカデミー外国語映画賞も受賞した「おくりびと」は後回しにして、早速、スタンリィ・キューブリック監督のブラック・コメディ「博士の異常な愛情」を観る。なんと云っても、我がピーター・セラーズが、英国空軍大佐マンドレーク、合衆国大統領、元ナチスアメリカに帰化した薄気味悪い科学者Dr.ストレンジラブと、3役で大活躍するのである。

1964年に撮られたこの作品では、世界は米ソの核戦争に巻き込まれ滅亡してしまうのだが、この作品に散りばめられた黒い笑いは本当に可笑しい。可笑しく、また凍りつく笑いに痺れる。そして、モノクロの映像の美しさ。狂気の将軍、ジャック・リッパーのクローズアップは、陰影くっきりとした映像の緊張感が素晴らしい。キューブリック作品で一番好きな映画だ。

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アメ村三木より連絡があった。イーストマン・AR 610Cだが、トラピーズ・テイルピースからエボニー・テイルピースへのリペアは可能とのこと。数日でメーカーより届くと云うことで、日曜に受け取りに行くことにした。11日の関ジャズセッションには、NEWギターで参加の運びになるかも。