犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

手練でも 滑らさるとは 罪深し

たまたま「ダウンタウンDX」を観ていたら、芋洗坂係長が出演していた。今年のR-1ぐらんぷりで突如登場した謎のピン芸人、と云う触れ込みながら、実は田口浩正と「テンション」と云うコンビを組んでいた小浦一優であり、芸人としてのキャリアはなかなかのものを持つ人である。
エピソードをランキング形式で発表するコーナーで、やはり出演していた高田延彦に説教されたと云う話を披露していた。

働いていたショウパブに、高田が客としてやってきた。昔からファンだった小浦は、はりきってネタを演じたところ、高田に呼ばれた。褒めてもらえるのかと思っていると、「お前のネタは古い」と延々一時間も説教を喰らったと云う。

今夜はその時のリベンジとばかり、そのときに披露した、マイケル・ジャクソン「BAD」に合わせて加藤茶志村けん坂上二郎伊東四朗ビートたけしエドはるみ、鳥居みゆきらのギャグを次々演じていくと云うネタを演じて見せた。大きな体で機敏に動きながら、「BAD」のフレーズにギャグを乗せて繋いでいく構成力は実に見事なもので、しかもしっかりエンタテインメントになっていた。

ところが、である。カメラはそれを見る高田延彦の表情も捉えるのだが、高田は苦虫を噛み潰したように憮然としている。怒っているような高田とそれを見て困惑する小浦を、ダウンタウンの二人がいじり、番組はその部分で生まれる笑いを拾い上げている。
これはマズいなぁ、と思った。

小浦の見事なネタを見て、やはり高田が面白くない、と感じたのなら、高田の感覚は救い難い。趣味の問題、と云うレベルではなく、高田はそもそも笑いと云うことが根本的に解っていない人だということになる。
まさかそんなことはあるまい。勿論、高田の不機嫌な表情は、番組が求めた演出なのだろう。小浦がリベンジを果たそうとするも、敢え無く返り討ちに合う、と云う展開である。
実は、こちらの方がよりマズいと思うのだ。しっかりネタの出来る芸人を、意図的にスベらせて笑いに変える、と云うやりかたは、つまりは芸人殺しではないか。
こうやってテレビは、いくつの芸を見殺しにし、何人の芸人を使い潰してきただろうか。

テレビは基本的に、在りものを消費することしか出来ないメディアだ。巨大な混沌とも云うべき無数の芸人達を、次から次へと使い潰していくメディアだ。
M-1やR-1が、芸人の存在価値である芸を評価しているのと違い、レッドカーペットやイロモネアやエンタと云った番組は、ただネタを羅列して、どんどんすり減らしていく。生き残れるほどしたたかな者は、ほんの一握りだ。あとはどんどん入れ替えられていく。

基本、芸事が好きなオレとしては、今のテレビのバラエティは身につまされてしまう。こんなこと、いつまで続けるつもりだろう。