犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

何度目だ となり 明けたら 崖の上

ドラマ「トリック」の第2シーズンの第1話。山田奈緒子仲間由紀恵)の母親、里見(野際陽子)が開いている書道教室の生徒が書いたお習字がいくつか紹介され、その中のひとつに、「なんどめだナウシカ」と云うのがあった。
「トリック」はテレビ朝日系の金曜ナイトドラマの枠で放映されており、その日の21時からは、日本テレビ系「金曜ロードショウ」で、何度目かの「風の谷のナウシカ」が放映されたわけだ。正に堤幸彦、「トリック」らしい小ネタだが、実は、関西圏ではこのギャグの効果が半減してしまっていた。
その当時テレビ朝日系のABCでは、金曜深夜には「ごきげん!ブランニュ」と云う番組が放送されており、「トリック」は一日遅れの土曜深夜放送に回されていたのだ。
探偵!ナイトスクープ」はまだしも、キー局がドラマを配信してくる金曜深夜に、トミーズ雅赤井英和をメインにしたバラエティを製作する感覚が、オレには全く理解出来ない。だらだらした、つまんない番組流すなよ。

さて、ABCの製作と編成に毒を吐くのはこれくらいにして、今夜は何度目かの「となりのトトロ」が放映されたわけだ。もう20年も前の作品なのに、この面白さはなんだろう。ついつい最後まで観てしまった。
一番好きなシーンはやはり、庭に蒔いた木の実を、月夜の晩に、のびろのびろと祈りを捧げて、あっと云う間に巨大な一本の木に育ってしまう場面だ。幾本もの苗木が一本にとけあって、ぐんぐん伸びていくイメージは、何度観ても圧倒される。

この後に来る、コマに乗って空を飛ぶシーンは、実はいまいち好きではない。サツキの「私達、風になってる」と云う台詞が理に落ちすぎてつまんないからだ。

カリ城」や「ラピュタ」のような活劇、「紅豚」のようなダンディズムは無いが、なにげない日常を丹念に描き、それを決して侵すことのない異世界が日常とフト交わる瞬間を描いてみせるこの作品こそ、日本のアニメのある到達点だと思う。

明日から、宮崎監督の新作「崖の上のポニョ」が公開される(だから今夜「トトロ」が放送された訳でもあるが)。「トトロ」から20年。「ポニョ」はどんな幻想を描いて見せるのだろう。