犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

コッポラが 描く現代の 黙示録

BSデジタルのBS-iで、フランシス・フォード・コッポラの「地獄の黙示録」を放映していたので、何年ぶりかで観た。

日本初公開は1980年。当時15歳だったオレは、さすがに劇場に観には行かなかった。後に、よみうりテレビだかで、ノーカット字幕で放映されたことがあり、この時に観たが、細部は忘れていた。

(余談。よみうりテレビは、伝説の映画番組「シネマ大好き!」を放送していた局だ。「ルパン3世 カリオストロの城」も、キー局の日テレが、ズタズタのカット版で放映していたのに、関西ローカルでノーカットで放映してみせた。映画に関しては、日本でもトップクラスの見識を持っている。)

今回は、BS-iの「サタシネ」枠で、前後編に分け二週に渡って放映するらしい。今夜はその前編。

地獄の黙示録」を細部まで覚えている人は、かなりの映画好きでも少ないのではないか。オープニングのドアーズの「The End」や、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を流しながら、ヘリが機銃掃射をするシーンとかは有名だが、そもそもストーリーの骨子となる、マーロン・ブランド扮するカーツ大佐の狂気や、その結末を、オレもすっかり忘れてしまっていた。
先述したヘリ機銃掃射のシーンや、プレイメイトの慰問のシーンまでは覚えていたが、それ以降の展開が全く頭に残っていなかった。

今夜、シサシブリに観直して、その理由が首肯できた。派手に展開する攻撃シーンのあと、陰々滅々とした川上りのシーンが続き、ジワジワと伏線が張られていくのだが、観るぞと気を入れなければ、なかなか入り込めない映画だったのだ。
とは云いながら、改めて、これは面白い映画だ、と今回は感じられた。
「ディアハンター」「プラトーン」「フルメタルジャケット」等々、数あるベトナム戦争を描いた映画の中で、この「地獄の黙示録」は異質だが、何れの映画も、この戦争の無機質さを徹底的に描いている。そして感じられるのは、アメリカ軍側の兵士の、危うい葛藤に比べて、ベトコン側の描き方の、なんと徹底した無名性か、と云うことだ。
ベトナム戦争が、如何にアメリカにとって、気味の悪い、得体の知れない戦いだったか、ということか。

製作から27年も経って、今更ながらそんなことを改めて感じているなんてドジな話だが、この映画が全く腐っていない、その強さに感嘆すると共に、この映画を腐ったと感じさせない、現代も行われている(アフガンやイラクの)戦争の無意味さを思うと、暗澹たる気分にもなってくる。

驚いたのは、無名時代のハリソン・フォードローレンス・フィッシュバーンが出演していたこと。
ハリソン・フォードは説明無用だろうが、フィッシュバーンは、有名なところでは、「マトリックス」シリーズのモーフィアスである。彼が18歳で、この映画に出演していたとは。随分痩せていた。

来週に放映される後編は、いよいよマーロン・ブランド登場だ。
狂気が心を蝕んでいく、その展開をじっくり楽しもう。