犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

ジャズやるべ♪ 夏から始まる 物語

夏の話を書く。
すっかり涼しくなったので、季節としてはズレてしまった。
数ヶ月前に書き始めて、推敲していたネタなのだが、お蔵にするのは勿体無いので、今夜の日記として披露することに致します。

夏には、青春映画がよく似合う。

ウォーターボーイズ」がそうだったし、「サマータイムマシン・ブルース」もそうだ。
アニメ版「時をかける少女」は、ひと夏の出来事と切ない別れを描いて、心震える名作になった。

夏と云う季節は、特別だ。

オレは秋生まれなので、秋好きなのだが、夏の、特別な匂いは、認めざるを得ない。
学生時代の夏は、特にそうだ。
学生時代は、個と世界が密着している。
スウィングガールズ」という映画に、その象徴的なシーンがあった。

ある夏休み。上野樹里貫地谷しほりは、ともに数学の補修を受けているが、普段のクラスが違うので、ほとんど接点がなかった。
その彼女たちの時間が、吹奏楽という触媒を通して、一瞬交わった。
無理矢理巻き込まれた吹奏楽が楽しくなり始め、それから離れざるを得ない、となると、共に、人目をはばからず号泣し合った。

悔しくて、吹奏楽部が応援演奏している、野球部の県予選をそれぞれ観に行き、そこでばったり再会する。
貫地谷が憧れる野球部の先輩に彼女がいたので、天邪鬼に、敵チームの応援をしたりする。
ばちがあたって、ファウルボールが顔に直撃したり。ひどい顔になったのを見て、ケタケタ笑ったり。

フツーの女の子のフツーの友達付き合い。それが、彼女たちの間に芽生えるのである。

ところが、夏休みが終わり、普段の授業が始まると、それぞれがそれぞれの生活圏内に戻っていく。
廊下ですれ違っても、「どうも」と、よそよそしい挨拶を交わすのみで、上野樹里は独りで、貫地谷しほりは級友と一緒に、左右に分かれていく。
廊下を曲がるところで、貫地谷はふと振り返り、去っていく上野の後姿を見る。
寂しそうに去っていくその姿を見送り、彼女は、目に当てていた眼帯を外す。
夏休み。一緒に観ていた野球部の試合。
あの日、ファウルボールがぶつかって瞼が腫れた。その瞼を覆っていた眼帯。
貫地谷しほりは、それを外して、ゴミ箱に捨てる。
夏休みの思い出を捨て去るように。

映画はこのあと、再び吹奏楽に向かって走り出す彼女たちを描いていくのだが、この、小さなすれ違い、別れのシーンが、アクセントになって、観客の心を掴む。

スウィングガールズ」は、オーラスの演奏会が冬に行われるという展開と、舞台が山形ということで、冬の映画というイメージがあるのだが、実は、伏線を張る夏のエピソードが印象的なのだ。夏の映画と呼びたい所以である。

夏には、青春映画がよく似合う。