犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

スラップスティック イン バス

朝、起きたら、腹具合がおかしい。先週、お袋が、どうやらノロウィルスを持ち込んだらしく、俺は下、親父も上下やられてしまったらしい。
軽症のうちに、と思い、今日は休んだ。一日、ギターの練習。

夕方、うだうだしていると、お袋が大声で呼ぶ。階下に降りていってみると、親父が風呂でのぼせ、ふらふらになってしまっていた。
去年の春に脳梗塞をやって以来、親父はすっかり弱っていて、風呂から上がれない、ということがしばしばあるのだが、たまたま休みで、在宅しているときにそれがきた。
風呂に入り、へたり込んでいる親父を抱え、外に連れ出そうとするが、親父は、無意識の内に、手すりなどをつかんで、身体を支えようとし、それを離さないので、風呂から連れ出せない。お袋が、「支えてるから! 大丈夫やから! 手ェ離し!」と云っても、なかなか離さない。とりあえず、脱衣所まで引っ張り出し、タオルを肩にかけ、床に座らせて、オレにもたれかからせた。風呂場の物音を聞きつけたらしいタイスケが、勝手口までやってきて、どうやらドアの前にいるらしく、「クゥーン」と寂しそうに鳴いている。

お袋が、居間のマッサージチェアの上に脱ぎ散らかした、親父の服を片付けたので、そこまで、肩を抱えて連れていく。段差があっても、親父は、足を運ぶことも出来ない。お袋と二人で、どうにかこうにか、居間まで連れて行く。決まり悪そうな笑顔を見せながら、親父は放心したようにマッサージチェアに深く座り込んだ。

考えてみれば、親父の親父、つまりオレの爺さんは、風呂に入っているときに、眠るように死んだらしい。オレが小6の頃で、あまり詳しくは覚えていない。
親父もそのうち、そういうことにならないとも限らない。税吏を勤め上げ、再就職も終えて、リタイアしてから10年が経ってるんだものなぁ。

ヤな話だが、オレも、覚悟がいるんだろう。