東西街殺し

10月から、仕事の現場が、堂島から四ツ橋に変わった。
四ツ橋は、色々と誘惑が多い。南船場は目と鼻の先だし、足を伸ばせば、堀江やアメ村にも近い。今は、懐具合がすこしさびしいので、自制しているが、給料日を迎えたらどうなることか。
このところ、急に涼しくなったので、努めて歩いている。朝は、西梅田から地下鉄に乗るのだが、帰りは歩く。四ツ橋筋を梅田まで、約30分。結構いい運動になる。途中の靭公園は、飛び込み営業をやってた時に、よく時間つぶしをした場所だ。帰宅の時間は、早くても6時半を過ぎるので、この季節だと、すっかり陽は暮れている。ベンチに座って日向ぼっこというわけにはいかない。久しぶりに、いい時間に公園に寄りたいところだ。
一旦、御堂筋に出てから、北上することもある。イチョウ並木は、まだ、色づいていないが、銀杏は、いくつも道路に落ちていて、車や人に踏まれつぶされ、独特の臭いを放っている。あれはあれで、風情のあるものだと思う。
四ツ橋筋も御堂筋も、本町から北は、いわゆるビジネスビルばかりで、色気がない。土佐堀通りと中ノ島を越えると、キタの繁華街の南端に差し掛かる。いわゆるキタの新地だ。ここいらの店に入ることは、めったにない。オレにとってこの辺りは、１国〜２国と梅田新道の交差点にあった、東映会館が思い出深い。梅田東映パラスなんかがあったビルだが、映画を観に行くより、３階（２階だったか？）にあった「アニメポリス　ペロ」に寄ることが多かった。いまじゃあ、ゲーマーズだ、とらのあなだ、まんだらけだと、色々あるが、当時（今から２０年くらいまえかな）、梅田で、アニメグッズを売っている店は、ここだけだった。ガンプラなんかを、ここで並んで買ったこともある。その東映会館そのものがなくなって、今はコイン駐車場になっているのは寂しいかぎりだ。
中央郵便局の向かいの、阪神のビルのあった場所にも、ヒルトンプラザウエストだの、ハービスエントだの、高いビルがどんどん建てられている。一方で、打ち水大作戦なんてキャンペーンもやったりしているが、どうもバランスがよくないのではないか。かつての京都のように、高さ制限を設けるだけでも、景観や、街の居心地そのものが守られるんじゃないかと、最近は、切実に思うのだ。御堂筋なんて、バカみたいに高いビルは少なく（長堀通りより南はそうでもないが）、銀杏並木が整備されていて、かつての都市計画の匂いが、まだ感じられる（とは云うものの、半端じゃない交通量と排気ガスに、大いに問題はあるが）。
というような日記を、10月中にUPしようと思い、推敲していたら、月が変わってしまった。仕事場も、四ツ橋から北浜に変わっている。ジプシーのように、うろうろしているという訳ではなくて、派遣中心のSEをやっているから、3ヶ月単位くらいで、現場が変わることが多いのだ。今月の仕事は、先月から継続している請負開発なのだが、現場に常駐せずに、自社に戻って作業をしている。自社が、北浜にあるわけですね。北浜と一言で言ってしまっているが、これも曖昧で、もう少し正確にいうと、堺筋沿いの道修町あたり、三越から２ブロックほど南になる。正直、この辺りも、色気のない街だ。考えてみれば、ここ2年ほど、誘惑の多い土地に近い現場で仕事をしていた。去年は、出張扱いで、まるまる1年、東京にいた。前半が浜松町。ひと駅先は新橋だ。今でこそすっかり、汐留のあたりに人が溢れて、日テレの街になっているが、「新橋のサラリーマン」といえば慣用句のようにも聞こえるほどに、去年の前半までは、酔ったサラリーマンの街だった。そうそう頻繁には、足を運ぶことはなかったが。定宿にしている東横インが、川崎にあったので、むしろそっちでうろうろしていた。ウム、別な意味で、誘惑の多い街だよね。
後半は、品川にいた。10年ほど前、台風で地下通路が浸水したとは思えないほど、品川駅は様変わりした。港南口なんて、かつての姿が想像できない。新幹線は停まるようになったし、アトレ品川だっけ、なんか小洒落たビルが建ってますな。インターシティは、ビジネスビルっぽい殺風景さがあるが、アトレは違うね。ドコモビルの辺りは、まだ荒涼とした感じだけど、最後の開発地なんだろうか、あと数年もしたら、汐留や天王洲や台場とも連絡がよくなって、一大ビジネス／アミューズメント地区になっちゃうかもしれないね。石原慎太郎は、カジノも誘致したいそうだから、あの辺り、もの凄いことになりそうだ。街殺しは止め処なく進んでいく。そちらの方々には悪いが、やっぱ東京は、仕事と遊びをする街だ、住む街じゃない。「幕末太陽傳」で、居残り佐平次が、「安房上総が一目で見渡せる」と云った品川は、もうすっかり忘却の彼方に消えてしまうんだろうなぁ。