犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

だらだらとでも 生き永らえるは アリだ

親父は、2007年の冬に死んだ。昼飯の餅を喉に詰まらせたので、事故死と云う扱いになる。
身体は弱っていた。50の声を聞く少し前から、胃潰瘍をずっと抱えていた。骨粗鬆症で膝も悪かった。年季の入った喫煙者だったので、初期の脳梗塞で1ヶ月検査入院もした。軽い肺気腫も持っていた。

しかし、ここが悪いそこが悪いと云いながら、永く入院することもなかった。要介護認定を受け、介護センターのデイサービスも時たま利用していたが、認知症と云った兆候はなく、つまりは、気力が萎えているのだった。飯を食うのも億劫がり、ところが、妹の妊娠が分かると、初孫が出来る歓びからか、急に食欲を見せ始めた。餅を喉に詰まらせたのも、慌てて食ったからだった。孫の顔も見ずに、半年も前に逝ったのだから、とんだおっちょこちょいである。

お袋は、今年の春に78歳になった。再来年は傘寿と云うことになる。こちらも、親父と同様に、重篤な病気は全くしていない。
お腹にもたれるからと、晩飯の時に、白米を食わない。代わりに酒を飲む。焼酎のお湯割りか発泡酒を、1杯か2杯。毎晩、飲んでいるが、深酒はしない。昼間から飲むわけでもない。眠れないからと、ナイトキャップに酒が欠かせない、と云うこともない。適量を続けている、と云うことになろうか。

血圧の薬は常用している。少し前に、静脈瘤の手術はしたが、このときも日帰り。病院に、永くお世話になったこともない。今でも、10歳ほど歳若い友人と、月に2回は飲みに出掛け、カラオケで天童よしみを唄い、午前様で帰ってくる。油断をするべきではないが、おそらく、こう云う生活をこれからも続けていくだろう。

そう云う両親の血を引いて、オレも、基本的には健康と云える。イヤ、アレルギー体質だし、30代前半から肝機能障害を抱えているし、血行がよろしくないのか、全身の凝りは慢性的だし、勿論メタボだし、色々ガタは来ているだろう。ただ、重篤な病を抱えている訳ではない。血圧だって高くはない。酒もタバコも辞める気はないが、結局はほどほどである。
おそらくは、小さな病気はいくつか抱えながら、だらだらと生き永らえて、だらだらと弱っていくのだろう、と思っている。

昨日のニウスで知った、今敏監督の訃報だが、本当にショックだった。オレとさほど変わらない年代の、しかも世界に向けて仕事を発信していたクリエイターの、余りにも早すぎる死。この人の作品は、「東京ゴッドファーザーズ」をDVDで、「パプリカ」を劇場で観ているが、実に刺激的で、ポップで、アーティスティックで、しかもエンタテインメントに溢れていて、素晴らしいものだった。新作を準備中とのことだったが、件の日記にあるとおり、余命を告げられ、死を覚悟せざるを得なくなった今氏の、次回作を全う出来ない、そのことで多くの人々に多大な迷惑をかけてしまう、その悔しさが痛く感じられ、身につまされた。

札幌の両親に、最期の別れを告げるため、呼び寄せるくだりは、悲痛だった。

公式ページに載った手記を引用する。

<寝たきりとなった私を一目見るなり母が言った言葉が忘れられない。
「ごめんねぇ!丈夫に産んでやれなくて!」
何も言えなかった。>

ここを読んで、泣いた。何と云う強さ、優しさ、そして、痛ましさだ。

オレは、親不孝で、自分勝手で、不遜で、いいかげんな息子だが、親父とお袋から受け継いだ、おそらくは、だらだら生き永らえるだろう身体を、両親に感謝しなければならない。親父は逝ってしまったが、お袋とは、これからも、だらだら暮らしていくのだから。
だらだら生き永らえて、お袋をちゃんと見送る事が、オレの唯一の親孝行だ。と思う。
そんな感じ。

HPに壮絶“遺言”世界的アニメ映画監督の今敏さん死去
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1321551&media_id=43