犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

二年振り 思はぬ人に 逢ふ神戸

一昨年の夏、オレはまだセッションに通うことは勿論、ジャズギターにすら手を染めていなかった。たまたま、mixi高槻市民のコミュに立った一つのイベントに目が止まり、JRの駅前、芥川商店街にあったジャズクラブ「A.Blakey」に、エブリン・ブレイキーのライブを聴きに行った。このライブでトランペットを吹いていたのがユキさん、行本清喜さんであり、この出会いがきっかけとなって、オレの現在の、週末セッション三昧の生活に繋がっていくのだが。

この日、ライブ終了後に、オレはエブリンのCDを買い、エブリンの顔がプリントされたTシャツを買った。Tシャツはひとサイズ大きいものをユキさんが店外に取りに行き、その間にオレは店のマスターに代金を払っておいた。やがてユキさんが戻って来、バンドの世話をしていたアメリカ人女性から、オレはTシャツを受け取る。

と、彼女はオレに、「Money」と云って手を出す。イヤイヤ、オレもうマスターに金払ったんだけど、と云いたいのだが、こんな込み入った内容を伝える英語力は持ち合わせていない。しどろもどろになって「I Paid」と云うと、彼女は「You Paid? OK」とすんなり納得してくれた。オレは無事、CDとTシャツを手に入れた。

さて、あれから2年。ユキさんが先月、ニューヨークから招聘したドラマー、ニューマン・テイラー・ベイカーと共演するライブが、三ノ宮のBIG APPLEであると云うことで、仕事を定時で切り上げて聴きに向かった。少し早めに到着、入り口の前にはここ数日のユキさんの日記にも登場する、ニューマンのマネジメントを務めておられるのであろう女性がフライヤーを持って立っていた。軽く会釈をして店に入る。
ユキさんに挨拶をし、シサシブリに逢う大友クンに声をかけ、ビールを飲みながら待っていると、「おとさん、彼女覚えてる?」とユキさんが、先ほどの女性を連れてきた。
「ホラ、エブリンのライブのときに、おとさん、Tシャツ買ったやろ。あの時の」 「エエッ!? あのときの人ですか? アッ!」 そうだった。件の女性メラニーは、正に2年前Tシャツ代の支払いで言葉を交わした、あのときの女性だった。
メラニーは、入り口でオレと軽く会釈を交わしたときに、なんとなく見覚えがあると思っていたらしい。いやー、オレの方はすっかり忘れていたのに。

演奏は、勿論極上であった。ヴィブラフォンの影山さんも、やはりエブリンのライブのとき演奏されていたベースの谷中さんも、天才大友クンも、勿論ユキさんも素晴らしかった。
そしてニューマンである。そのドラミングは理知的で、実に注意深く、抑制されていて、しかしドラムソロに入ったとたん、弾ける熱とパワーに溢れる。あー、この人と日曜、ジャムセッションするんだよなァ。先週の月曜、JKカフェでラリー・ランサムに逢ったとき、「次ノジャムセッションハイツデスカ?」と聞かれ、「7/6の日曜。ニューマン・テイラー・ベイカーがホストで来る予定よ」と答えると、「ニューマン!? ジャムセッションニデスカ!?」と驚いていたっけ。

さすがに三ノ宮は遠いし、金曜には地元・JK BIRDでのライブも観られるので、1stだけで失礼することにした。メラニーに挨拶しておこうと思い、握手をして「I'm Go Home」と云うと「Go Home? Why?」と聞かれた。家は遠いし明日も仕事だし、と云いたかったのだが、2年前のようにしどろもどろになって「My Home Is Far Away」と云うと「Oh,Far Away. OK」と納得してくれた。また金曜、BIRDで逢えるからいいよね。