白く光る 十六夜月の 狂ほしく
朝夕、めっきり涼しくなった。
仕事を片付け、さあ帰ろうと、居室のドアに向かうと、デスクの電話が鳴る。あ〜あ。しかたなく戻り、出ると、開発システムの試験担当者からの質問。
はっきり行って、どーでもいいような質問で、げんなり。テキトーにあしらって、引き上げた。
帰る道すがら、涼しいのを通り越して、肌寒い風が吹く。
見上げると、真っ白に光る満月。
月の光ってのは、やっぱり、妖しい。
「そして僕は、わずかに白くチラチラと月に照りかえすほかは、月光をすべて吸収しつくすという具合に、黒くかげっている葉むらのあいだにはいりこんで、自分の頭のてっぺんもまた月の光にさらされ、そこから狂気めいた「月の力」がヴィールスのようにしのびこむことを漠然と思っていた。」
(大江健三郎「月の男<ムーン・マン>」より)
窓から差し込む月の光が、心乱してしまうかもしれない。
少し、酒が過ぎるかな。