犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

変ホ長調で11日

いささか旧聞に属する話だが、去年の、「M-1グランプリ2006」について、書いておきたいことを改めて書く。

取りも直さず、変ホ長調である。このコンビについては、ちゃんと語っておかなければならない。

変ホ長調の漫才を観ていて感じたのは、とにかく、素人さんが一生懸命やっている、ということだった。

センスは鋭い。

「(少年隊の)カッちゃんとニッキは、どっちに先に挨拶したらいい?」
「どっちでもいいやろ。ヒガシがいたら、ヒガシやけど」

「お天気お姉さんって、お天気、踏み台にしたはる人やんなぁ」
「その割りに、結果は出せてないなぁ」

この鋭さで、プロも含めた3300組以上のコンビをなで斬りにして、決勝まで進んできたわけだ。

しかし、彼女たちと、他の決勝進出8組(敗者復活で進んだライセンスも含め)の最大の違いは、云うまでも無く、ネタの外側にある糊代である。

プロの芸人さん達は、場の雰囲気を敏感に察知し、臨機応変に対応してみせる。ネタはネタで運びながら、アドリブも挟んで、観客を煽る。スベッたらスベッたで、それすら次の笑いに繋げる貪欲さも見せる。
結成10年以内であれば、それが出来ない芸人も多いだろうが、少なくとも、決勝まで勝ち上がってくるメンバーは、そのくらいのスキルは身に着けている。

当然のことながら、アマチュアである変ホ長調に、この部分は見事に欠落している。

オレは、かつて芝居ものだった。アマチュアパフォーマーだったので、彼女たちの思いは痛いほど解る。
ウケようがウケまいが、きっちりだんどりを踏んで、やりとりを運んでいく。
ウケれば気持ちがノるし、ウケなければ焦る。しかし、それだけのことなのである。
スベッたからといって、その場で取り繕おうとなど、彼女たちはしない。出来ないのである。

あの場で、彼女たちが考えていたのは、大過なく4分を乗り切ることだった。それ以上は、おまけみたいなものなのだ。

だから、カウス師匠や洋七さんの高評価は、全く過大なものだったと思う。
且つ、松っちゃんの評価は、冷静に過ぎる気もする。

変ホ長調の決勝進出」

つまりはこれに尽きる。これで役割は果たせているのだ。今回に関して云えば、M-1という大会にとっても、そこであがりだったのである。
完全オープン参加。アマチュアにも門戸を開いてきたM-1の、意義と限界が、如実に浮彫りになった大会だった。

場の雰囲気を掴み、巧みにネタの外側の糊代を操ってみせる、「達者なアマチュア」が出てくる。次の課題はそこだと思う。

果たして、そんなコンビは、いるのだろうか?