犬と暮らす人

2011年1月まで、ラブラドール・レトリーバー「タイスケ」と暮らしていた、表はフリーのシステムエンジニア、裏はなんちゃってジャズギター弾きの日常。

繰り返される諸行無常 蘇る性的衝動

某Fテレビ系で放送されている、「僕らの音楽2」という番組がある。
超大手家電メーカS社一社提供の番組で、国民的アイドルグループSの「いいひと。」Kがナレーションを務めている。

(意味無いイニシャルトークはこれくらいにして)

毎週ひと組のアーティストをピックアップして、対談とライブで構成されていて、フジらしくなく、落ち着いた番組作りをしている。
番組開始当初は、鳥越俊太郎氏がホストを務めていたが、春からマイナーチェンジして、アーティスト同士の対談形式になった。

クドカンSMAP横山剣TOKIO長瀬、桜井和寿スガシカオ槇原敬之HOME MADE 家族、ゆずとヒロスエスカパラ柴崎コウBONNIE PINK綾戸智絵、等々。

正直云うと、鳥越氏との対談の方が、オレは好きだった。
ジャーナリストである鳥越氏は、aikoにも、一青窈にも、平井堅にも、山口隆にも、大塚愛にも、同じように接していた。あくまで、外側の人間としてのスタンス。
今の形式では、どうしても、仲間褒めの傾向が出てしまう。それはそれで、それなりによいのだが、鳥越氏という外側の人間が向ける視点への、構え、警戒感、理解を求めるレトリック等が、絶妙の緊張感を生み出していたように思う。そこに、あの番組の大きな魅力があったはずだ。
おそらくは、地味であることからくる視聴率の関係で、マイナーチェンジが行われたのだろう。
組合せの妙というものもある。以前の形式の方が好きではあったが、現状は現状で、楽しんでいる。

何週かまえに、向井秀徳椎名林檎の対談があった。
これは、スタッフの大英断だったのではないか。椎名林檎ではなく、向井秀徳をメインとして、彼の曲を2曲も電波に乗せた。
殊に、「自問自答」には衝撃を受けた。
オレは、寡聞にして、NUMBER GIRLZAZEN BOYSも知らなかったのだが、一発でノックアウトされてしまった。

強い酒のような、痺れる毒を含んだ、向井の歌詞は、久しぶりに、流すことなく、身構えて受け止める甲斐のあるものだ。
例えば、サンボマスター山口隆の歌詞は、流せるのだ。BGMに出来るのである。熱いパフォーマンスに比べて、意外にメロディアスな旋律に乗っているせいかもしれない。

向井の歌詞は、しっかりと受け止め、噛みしめてみると、眉を顰める苦さの中に、じわりと微かな甘みが滲む。
その甘みは、心地よいばかりではない。
敵意、悪意を外に向ければ、同じだけ、自分にもそれらが向かってくる。その現実から逃げない。納得は出来ないが、決して逃げない。

旧知の間柄らしい椎名林檎との対談では、韜晦するようだった向井の、心根が届いてくるようで、オレは画面をじっと凝視していた。
苦味と甘みが綯い交ぜになった毒を、舌の一番奥で感じながら、音を捉えていた。

こういう表現者に出会わせてくれた、番組のスタッフに感謝したい。騒がしいものを作ってるばかりじゃないのだ、彼らは。今更ながら。
自分が好きなものを伝えたい。いいと思うものを伝えたい。そのために真剣に闘い、真剣にふざけている。彼らは間違いなくプロだ。

株価の上下に血眼になっておられるような方々には、決して出来ない仕事だ。