「忠臣藏とは何か」
12月14日と云えば、忠臣蔵を思い出す、と云うのは、かなりオヤジな発想なのでせうな。まあいいや。
オレも正直、忠臣蔵自体には、さほど興味を持てなかったのだが、15年ほど前に、ある評論に出会って、目から鱗が落ちた。
「文学が事件を生み、その事件を題材にして新たな文学が生まれる」という仮説に立って、赤穂事件と歌舞伎の関係をダイナミックに捉えた文芸評論。
丸谷才一と云えば、未だに旧仮名遣いで文章を書くだとか、日本語の乱れがどうだとか、うるさ型の辛気臭い人だと思っていたのだが、この本には興奮した。丸谷の代名詞とも云うべき旧字旧仮名遣いが、茶目っ気のようにも見えてきて、うるさくならないし、読んでいて楽しい。
(お気付きの方もおられるとおもうが、書名に使われているのも、「蔵」ではなく旧字の「藏」だ。他にも、「文芸」→「文藝」 「証明」→「證明」等々)
ドラマや映画では見られない、視点の違う忠臣蔵。仇討ちそのものを、一種のノリ、大向うを唸らせる派手なパフォーマンスと指摘する思い切りは、なかなか痛快。文芸評論と聞くと、どうもカタい感じがするが、意外なお薦め本です。
文芸文庫って、単価設定、高いンですがね。